米国ペンシルベニア州政府日本事務所  ペンシルバニア州の事業環境・優遇助成制度のご紹介、日本企業のペンシルベニア州への直接投資に関する各種サポート・ご相談



エリザベス・リオーダン氏、ピッツバーグ大学医療センター(以降UPMC)・デジタルヘルスイノベーション部長 2021年8月18日

この1年半の間に、人々の受診方法はめざましく変化しました。医学は常に新しい発明や革新を求めてきました。ポリオワクチンや世界をリードしてきた臓器移植のようにいくつかはここピッツバーグで開発され、完成しました。しかし、ヘルスケアの未来について私が最も期待しているのは、消費者に焦点を当てたデジタルヘルスツールの台頭です。ピッツバーグは、ヘルスケア及びテクノロジー企業双方の養成所でもあるユニークな立場のおかげで、先導的な役割を果たしています。

デジタルヘルスツールは新しいものではありません。15年以上前から、UPMCをはじめとする医療機関では、健康増進や患者と医師のコミュニケーションをサポートするモバイルアプリを開発してきました。これらのツールは、スマートフォンやコンピュータを介して主治医、ヘルス教育資料、また多岐にわたるサービスを提供するヘルスコーチ、看護師、栄養士、管理栄養士、カウンセラーなどへ要望に応じてアクセスを提供します。

UPMCヘルスプランにおけるデジタルヘルスツールは、会員参加型戦略の中で重要性が増しています。革新的なデジタルヘルスツールを優先的に導入し続けることで、会員は必要な場所で、必要な時に必要な方法で、質の高い、手頃な価格のケアを受けることができると考えています。

COVID-19パンデミックの影響

2020年3月以前よりデジタルヘルスツールは存在しましたが、幅広く利用されてはいませんでした。一部の早期導入者(early adopters)を除き、ほとんどの消費者や患者は、これらのツールがヘルスケアや情報にアクセスするための選択肢とは考えていませんでした。デジタルヘルスツールがヘルスケアの変革につながる可能性については、業界内でもしばしば議論されていましたが、活用に至る緊急性はそれほど高くなかったのです。

コロナウイルスパンデミックが公衆衛生上の深刻な脅威となったとき、意識は急速に変化しました。人々はデジタルツールを使い、最も的確で最新の健康情報を得、心身の健康目標を達成し、支障なく医師と連絡がとれることを求めたのです。同様に、医師をはじめとする医療従事者も、特に慢性病患者や、コロナウイルス重症化リスクの高い患者への診療継続の方法を求めていました。

UPMCとUPMCヘルスプランは、デジタルサポートツールへの継続的投資を行うことにより、既存の設備やインフラを活用してこの要請に応えることができました。 UPMCどこでもケア(UPMC AnywhereCare)はモバイルアプリで利用できる介護やサポートを拡大するために、パートナー企業と協力しました。このアプリには、UPMC小児病院が行っている0〜18歳の子どものための緊急診療のほか、複雑な小児介護の管理、健康のための仮想カウンセリング、妊娠サポート、歯科サポート、新しい医療機関を探している人のための診療ナビ、認定ヘルスコーチによる1対1のコーチングなどが含まれます。また、新しいモバイルアプリ「RxWell」を発表しました。このアプリには、デジタルヘルスコーチが搭載されており、個人がストレス、不安、うつ病に対処し、健康行動を改善するのに役立ちます。このようなアプリは、ユーザーの都合に合わせ、バーチャルな対面式の会話を即時に行ったり、チャットでサポートを受けたりする機能を飛躍的に向上させます。

デジタルヘルスツールの利点と課題

健康管理やサポートサービスを受けるための必要性が急速に高まったことで、デジタルヘルスツール技術への認識が大きく変わりました。今では、より多くの患者と医師がこれらのテクノロジーを快適に利用しています。COVID-19パンデミックの状況変化を乗り越えていく中で、多くの人は利便性、快適性、プライバシーの観点から医師や医療提供者との仮想診療を選択し続けるでしょう。

デジタルヘルス機器の利用拡大は、パンデミックにより悪化した健康格差の問題対処にも役立ちます。自宅やオフィスから診療を受けられることで、交通手段の確保や育児、仕事の休暇など、介護やサポートを受ける上での一般的な障壁を減らすことができます。このような障害があると、介護の遅れや、予約の不成立につながります。デジタルツールは、医院や病院まで1時間以上かかるような僻地でも、診療へのアクセスを高めることも可能です。

同時に、改善の余地も多くあります。ランド研究所の最近の報告書によると、2020年3月以降、遠隔医療の利用は20倍に増加しましたが、大都市圏に比べて貧困度の低い郡、および成人の間での利用が高くなっています。 さらに、これらのデジタルツールを利用するために必要なスマートフォンやブロードバンド環境、データ要件は、人口や地域によって異なります。現在、議員をはじめとする地域の関係者はこの「IT情報格差(デジタルデバイド)」を解消するための投資と方策を検討しています。

私たちは、パンデミック後の平時におけるデジタルヘルスツールの利用維持の戦略を立てる必要があります。UPMCヘルスプランの独自データによると、遠隔医療の使用により問題行動医療、初期診療、家庭治療、そして一部の専門分野では引続き強力であるものの、現在ではパンデミック初期のレベルをはるかに下回っています。 対面式ケアは、医療サービスを提供する上で非常に必要な要素であることに変わりなく、いくつかの分野での減少は適切であると言えます。しかしながら、診療へのアクセスと質を最大化するための最適な方法を、医療界が時間をかけて適応し理解することで、遠隔診療やデジタル医療の機会が増加すると考えています。

ピッツバーグのデジタルヘルスの未来について注目すべき4点

大多数の人がデジタルヘルスは続いていくと考えていますが、重要な疑問はまだ残ります。まず、単発の解決策ではなく、包括的なデジタルヘルスエコシステムをどのように構築するかです。デジタルヘルスツールを維持・向上させるには、他のサポートやサービスとの統合が不可欠です。デジタルツールと対面式診療の間での情報やサポートが滞りなく行われて初めて個人のトータルケア体験を向上させることができるのです。

二つ目は、デジタルツールと対面式の診療の最適な組み合わせとは何でしょうか? 2020年には、ほとんどすべての治療やサポートがデジタル機器を介して提供されていることが分かっています。しかし、特定のサポート、サービス、治療は、いずれかの方法で行う方がよいかもしれません。例えば、年に一度のウェルネス遠隔診断を行うことは、病状のない人には適していますが、糖尿病などの病状がある人には適していないことがわかります。このようなデジタルと対面式のニュアンスの違いを探ることは、現在、UPMC高度健康管理の研究分野の一つです。

三つめは、デジタルヘルス機器導入における医療機器提供者の役割を考えてみましょう。私たちの調査によると、患者は、医師や医療機器提供者が処方を行う場合、デジタルツールを利用する傾向があります。同時に、デジタルツールでの処方にあたり、医療機器提供者は既存のシステムに調和して統合された、事実に基づく解決策を求めています。私たちは、UPMCの医療機器提供者と協力して、特に慢性疾患の管理や妊産婦の健康の分野で、これらの問題に対処するために取り組んでいます。

最後に、そしておそらく最も重要なことですが、デジタルヘルスツールがヘルスケアの価値を高めていることをどのように保証し続けることができるでしょうか。私たちは、最高品質のケアとサポートサービスを、最も手頃なコストで、利用者と地域社会に提供する解決策を採用する必要があります。ピッツバーグを拠点とするUPMCヘルスプランは、ヘルスケア変革の重要な分野における、学習とイノベーションの最前線にいると確信しています。